訓練室にて(午前)
センター職員さんの案内で、みとびらメイトさん達が作業をする訓練室に入りました。当然ながら私語は無く、ミシンの音だけが聞こえて来ます。
3名のみとびらメイトさん達は、ひとりはあずま袋、ひとりはフリンジのアイロン掛け、ひとりはさかなチャームの縫製をしていました。
まず驚いたのは、あずま袋を縫っているメイトさんは、待針を使ってませんでした。あずま袋は斜めに切った部分の布が伸びやすく、単純な見た目より縫いづらい構造になっています。バイヤス部分を手で押えるだけで縫うのは、かなり大変な作業となります。しかもデザインはリバーシブル。みとびらのあずま袋は表と裏の布は素材が違うので、更に難易度が上がってしまいます。
フリンジは工場でタグを作った時に出る廃材で、本来は廃棄されてしまう部分です。廃棄されるとは言え、製品と同じ素材で同じ配色。これは何かに使えるのでは?と、企業の方が寄付して下さいました。汚れはないのですが、段ボール箱に詰め込まれていたのでシワシワです。それに丁寧アイロンを掛けつつ、フリンジがほどけないように熱接着テープを貼っていく。メイトさんのそんな地味な作業の先に、SDGsが実現されるのです。
さかなチャームを縫っているメイトさんの作業台には、縫製前のさかなが並んでいました。丁寧にカットされ、配色を考えて並べられている様は、まるで熱帯魚の群れのようです。
みとびらでは布地選びや配色も、メイトさん達にお任せしています。自分で考えて自分で決める事は、物づくりの基本であり、そこにこそ作る楽しさがあると考えているからです。作業台の上で楽し気に泳ぐ布のさかな達は、みとびらの目指す所、そのものだと感じました。このさかな達も、パーツが小さいのでかなり縫いづらそうです。
訓練室にて(午後)
メイトさん達が手を入れてくれた、タペストリーを受け取りました。美祢センターで、1年間に渡って磨いて来た縫製スキルを発揮して、パーツを留め付けてくれたのです。その作業のお陰でパーツはしっかりと固定され、作品として展示できる状態に仕上がりました。この後は、額に納める作業が待っています。
今回は矯正展までに、目標としている商品点数を仕上げなければならず、メイトさん達は量産体制に入っていました。縫製指導員さんが大車輪でサポートする傍らで、浅野も2種のチャーム(さかな・さんご)のカット作業をお手伝いしました。
しかしながら、和服地がこんなに扱いづらいとは、思ってもいませんでした。待針で留めても布がズレる、切ろうとすると布が逃げる。しかも、布の種類は千差万別。たらたらした布や、やたら張りのある布。柔らかい布はズレまくるし、固い布は合印を入れづらい。本当に大変な作業でした。縫製指導員さんが6枚重ねでカットする所を、4枚重ねでカットしたのにこの有様!何とか予定の枚数は切れましたが、悪戦苦闘してしまいました。
みとびらで依頼している縫製指導員さんは、休憩も取らずに立ちっぱなしで作業を続けています。その縫製指導員さんにメイトさんから、「明るい色を使いたい」との声掛けがありました。それに応えて、すかさず布の入った袋を渡す縫製指導員さん。「自分で考えて、自分で決める」メイトさんと、それをサポートする縫製指導員さんとの関係が、垣間見えた瞬間でした。みとびらが目指す所を理解して、指導して下さる縫製指導員さんは、みとびらにとってもメイトさん達にとっても、本当に得難い存在であると感じます。